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「機能」
 
 あるとき
 目の奥の辺りで
 かすかな明滅が始まる
 
 それは本当に小さく弱く
 ほとんどないような光だけれど
 
 僕はその「機能」が
 自分に備わっていることなど
 とうに忘れていたのだけれど
 
 その明滅が始まるとき
 自分の存在や世界の理(ことわり)や
 あらゆることの意味
 意味それ自体
 
 理由という理由
 価値という価値
 全てがうっすらと消えていく
 
 この世界は
 琥珀に閉じ込められた蜻蛉のように
 全く動きを持たず
 運命と名づけることさえ許されずに
 1ミリの遊びもなしに凍っている
 
 
 ゆっくりと
 僕の目の奥の光の明滅が
 琥珀を熔かし
 やがて破れめが広がっていく
 
 誰にも備わっているはずの
 その「機能」が
 僕の中でめざめる
 
 それは希望ではなくて
 定めなのだけれど
 

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