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水無月に溺れたみみず椋鳥の夕食となる塗り立ての畦
 
田の面に水張り終えて音もなく僕はそれを美しいと思う

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 神さまは剣を振るって田の草にまぎれた蛇を真っ二つにする
 
 田の蛇に一つも罪はないけれど神さまは言うただ許せよと
 
 我もまた田の蛇のごと地に伏して神の剣にはなすすべもない
 
 我に問う蛇になくても我が罪は数え上げれば指が足りない
 
 その罪は例えば今日は神のごと鎌を振るって田の蛇殺めり

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久しぶりに俵万智の「サラダ記念日」を図書館で借りてきた

 
 万智ちゃんのリズムがスッと憑依して今日は短歌を詠む僕がいる
 
 溶けているひなたの猫と君の脚緑のシーツも仲間に入れて
 
 あのころはロマンチックな恋もしたスイゾッカンのガラスの前で
 
 何故だろうあんなにシリアスだったのは夕焼けを見ても今は泣かない
 
 連作で短歌を詠む味を覚えてきたような朝のレンゲ畠

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 善きことを与えし人の独善を見ん今朝ほどの不味きコーヒー
 
 たった一度否という思い沸きてのちは甘き笑顔もバッテンバッテン
 
 人様に完璧を求むとき振り返れば穴だらけのアルバム焼き捨てしフィルム
 
 高慢と偏見の果ての結末がハッピーエンド鈍感と矛盾
 
 いつであれ自分のことしか考えぬ猫の毛皮に顔をうずめる

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もしもひとつかなう望みがあるとしたら神よ息子に母与えかし

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鶯や誰に聞かすかその声音吾には届きぬ雨だれのなか

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役目終えし古き水屋を解体す良心を持つ首切り人の如く
 
刑場の露と消えるか水屋一竿血潮のような木片を掃く

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人生は無限ループに違いない同じ道だけど今日はどう歩く?

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二度とない瞬間が今ここにある片方だけの靴下は9足?

空き店の恵比寿となりぬ田面にて憎きカラスも今はともがら

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四月には亡くしたものが一つある花は咲くより散るときが好き
 
きらめいて舞い落ちる中ただひとり踏みしめてゆく葬送の花
 
散るころの葉桜の色やわらかく匂やかに想う桜餅ふたつ