軽がろと抱き上がる君の体さへ虚空に消えし霜月の朝
今日の短歌
健やかは体なしとぞ感じける幸多かるは心なしとや
今日の短歌
我がために柿の木を切る腕ほどの年輪白く痛さ身に沁む
今日の短歌
陽だまりの秋の秘密の小庭にてひっつき虫と恋仲になる
今日の詩
矢印は決まっている
どうしてもそちらを向く
それが何だか損な方でも
そっちしか向けない
一人は弱い
でも強っぽいフリは嫌
徒党を組んでも
弱いは弱い
何も変わらない
そのままで
どんどんそのままで
ずっとそのままで
力を抜いて
緩んだままで
立っているのは辛い
傷つきやすくいるのは
痛いけれど
それで何かが良くなるわけでもないけれど
そうしかできない
主義でも信条でもない
逆らえない何かがあって
僕は
そうしかできない
今日の詩
羽ばたく未明の黒鳥
異界への畏れは
混じり合う混沌へのあこがれ
稀に見る目を持ち
その境界を渡れ
祝祭の火をもて
その羽毛を焼け
今日の詩
みなさん
僕と息子をあなたたちの
「外側」においてくれて
ありがとう
おかげさまで
「外側」なんてない
と気づくことができました
今日の短歌
秋の月今宵果てむと鳴く虫に冬の憂いのあるわけもなし
今日の詩
列車に乗って、
窓から流れる景色を見やるとき、
私はいつも思う。
離れた景色はいつも私とともにあり、
近くの眺めは決まって私から遠のき去っていく。
それは私の人生の眺めそのままだ。
私があまりに速く動くからか、
あまりに動かずじっとしているからか、
近くのものは私の歩みに合うことがない。
私の視線はいつも遠くを見やって、
そこにだけは焦点が合うのだ。
今日の詩
取りかえしのつかないできごとが
私のなかによみがえるとき
私はおさえることができない
おなかの底からつきあげて
ああああと
声があふれでるのを
その声はきまって
私がいちばんくつろいで
心のでぐちをゆるめたときに
とつぜん
そのときの顔つきや手のしぐさをうかばせて
あふれてくる
だから私はゆだんできない
だから私はいつまでもかたいままだ