かばう手をおろしてみればみはるかすせきらに咲くや桜花の群れ

HASUNOZA
かばう手をおろしてみればみはるかすせきらに咲くや桜花の群れ
時が来てタネの私を土にまく神がするのはただそれだけのこと
生きるのも死ぬのも同じ時の矢と気づきし夜に奥歯抜けけり
ため込んだ心の中の独り言ことばに出してからっぽにする
そのことば美しい歌にできるなら人の心も汚さずにすむ
日に一度耳を塞いで目を閉じて言葉失くして湯に浸かりおり
詩詠みはざるで水汲む所作に似て空手で今を掴もうとする
八十路半ばまで少年として生き抜けん彼を範として我生きんとす
猫はいつも深く深く頬擦りをするこれがこの世で最後のように
雨のふる音がしているみなそこに沈んだようにまわりじゅうから
「百尺竿頭進一歩」
内側を覗けばいつもの声がする「out on a limb」手を離しなさい
猫の世界に
猫の世界に
チンピラはいない
彼らは自分の中に
神がいるのを知っていて
だから決して
自分を嗤うことがないのだ
あらたしきページをめくる吾の手に鉛筆はある消しゴムはない