今日の詩
時間を持たない人
あなたは知っているだろうか
時間を持たない人のことを
僕は幸いにも
その人を知っている
永く永くその人と暮らすうちに
僕は気がついた
その人は時間を持たないのだと
初めのうち僕は
いやずいぶん長い間僕は
時間を持たないその人を
ある感覚が失われているのだと思っていた
例えば
味わうことができないとか
飛ぶことができないとか
笑うことができないとか
僕は長い間
時間を持たないことは
一つの欠落だと感じていた
なぜなら
その人はずいぶんと苦しんでいたから
この人の世で
時間を持たないことが
どれほど不都合なことか
その人は時間を持たないことで苦しんでいた
あるとき
僕の中に一つの考えが浮かんだ
僕たちは時間の檻に囚われていて
その人は檻の外にいる
そう考えると
時間を持たないことは
何かの欠落ではなく
むしろ囚われからの自由だった
自由であることで
苦しむ必要はない
僕はそう思うようになった
時間を持たない目でこの世界を眺めてみれば
どれだけこの世界が窮屈なのか分かる
僕は時間を持たないその人が
なぜそれほど苦しむのかが
少しわかるようになった