名づけることの考察

 名づけることの考察
 
 ハイタカという魔法使いがいて
 彼の住むアースシーの世界では
 誠の名が力の源だった
 
 ハイタカは呼び名であって誠の名ではない
 誠の名は力の源であるという理由で
 大切に隠されてあったのだ
 
 しかし実のところ
 
 呼び名であるハイタカが
 力をもたないふつうの名前にすぎないのは
 それが呼び名とされ隠されもしなかったからだ
 
 誠の名もそのものに力があったわけではない
 まこととよばれ隠されることによって
 それは力を宿し力を増したのだ
 
 言葉は人の心をあやつる魔法のつえ
 名づけることの力は言葉に宿っている
 
 そしてそうだから
 言葉はおしみながら使わねばならない
 かくされながら使われねばならない
 
 そうして生まれた美しい言葉で
 人の心は美しくなる
 この世は美しくつくりあげられる
 

Posted by hasunoza