今日の詩

無題
 
 頭の上の電灯を見上げていたら
 ときどき部屋中が淡い煙に満たされている
 魚を焼いた後でもないのに
 
 それはきっと
 空気を構成する窒素や酸素やアルゴンや二酸化炭素の
 分子が見える一瞬に違いない
 
 それらの分子は
 大変なスピードで飛び回っていて
 分子そのものも激しく振動しているのだから
 
 けぶったように見えるのは
 何兆分の一秒という
 瞬間を見ているのだ
 
 瞬間は光を発しているだろうか
 いや光さえとまって見えるくらいの
 短い時間なのだから
 
 光が目に届くわけがない
 どうやって見ることができるのか
 見ることの不可能の瞬間を
 
 だからこの世は夢に違いない
 毎夜夢を見るとき
 僕は光もなしにそれを見ている

Posted by hasunoza