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昔から土曜の昼間が好きだったディズニーランドのある金曜の夜より

 小学生の頃の僕は神経質で気が弱くて、引っ込み思案の子どもだった。土曜日が好きだったのは何よりも給食がなかったからだ。
 特に好き嫌いがあったわけではないが、人と一緒に食事をするのが苦手で、緊張すると食べ物が喉を通らなくなる。よく5時間目まで残されて、一人給食と格闘するという地獄を味わった。
 中学に上がって給食がなくなり、昼食は弁当か業者が売りにくるパンと牛乳になって、僕は救われた。そして、いつの間にか人と食事をするのが苦にならなくなった。
 金曜で思い出すのは住んでいた団地の市場前の広場にあったカラーテレビだ。それは昭和の三十年代でおそらくカラーテレビのある家はよほどの金持ちで、むろんその団地にそんな家はなかった。
 金曜の夜8時には、街灯のように2メートルほどの高さに設置されたそのカラーテレビの前に団地の家族連れが集まった。隔週で交互にプロレスとディズニーランドをやっていたのだ。僕も父に連れられて、よくディズニーランドを観に行った。
 そんな金曜のある夜、事件が起こった。晩御飯を食べてから父と一緒に市場まで行こうと玄関に出た時、何の拍子か父の脇をすり抜けて外に出ようとした僕の左の目に、父のタバコが当たって火傷をしたのだ。幸い火傷は瞳ではなく白眼だったので大したことはなかったのだけれど、それを機に父はパッタリとタバコを吸わなくなった。
 
「毎日が日曜日」になったはずの今でも、土曜日は何とはなしにウキウキとした気分になる。
 明日という日に何も課されたもののない開放感、それはまさしく自由の味わいだった。