今日の詩

2020年9月10日


 一週間ぶりに
 勢いよく自転車で
 彼が出かけた
 
 彼が行くと
 それまで気づかなかった
 いろいろな音が溢れてくる
 
 セミの声 扇風機の羽の回転する音 猫の寝息 
 それは僕の心の
 静かさの音
 
 彼が行くと
 それまで気づかなかった
 その静かさが溢れる
 
 僕は
 ずいぶんとずいぶんと
 タフになったものだ
 
 彼がいるときの
 まるでお祭りが三つほど
 いっぺんにやって来たような
 
 全ての音という音がかき消されて
 彼だけで目一杯になって
 それでも足らずに
 溢れるままに
 その混沌に浸り尽くすときと
 
 そして今彼が行くと
 全く音のメーターが
 ゼロから反対方向に振れるくらい
 黒い穴のような
 静かさがやってくるのと
 
 黒猫と目が合うと
 彼もまた
 そのコントラストをやり過ごし
 からだじゅうの力を抜いて
 そっと息をしている
 
 
 

Posted by hasunoza