今日の詩

「詩は」
 
 詩は
 
 夜更けに
 募る思いに
 正気を失い
 勢いで書いた
 ラブレター
 
 朝
 冷めた気持ちで
 眺めた日には
 
 間違いもなく
 破り捨てたくなる
 

「蜩(ひぐらし)」
 
 日暮れどき
 雨の降り止む
 束の間の
 蜩(ひぐらし)が鳴く    
 
 かなかなと
 かなかなと
 蜩が鳴く
 
 なぜこの虫の音が
「かなかな」と
 聞こえるのか
 
「かなかな」としか
 聞こえない
 この耳に    
 蜩が鳴く
 
 雨の降り止む
 日暮れどき
 かなかなと
 かなかなと
「かなかな」としか
 聞こえない
 蜩が鳴く
 

 「むさい男の法則」
 
 朝、洗面所に立つ
 目の前の鏡の中に
 むさ苦しい男がいる
 
 髭面で
 髪はぼうぼう
 
 かつてどこかで
 おなじ類(たぐい)の
 男に会った
 
 何人も
 何人も
 
 そういう類の男たちは
 みんな決まって
 心やさしい男だった
 
 少女のような
(これは希望的観測)
 やさしい心を持った
 むさ苦しさだった
 
 強がって
 肩をそびやかせて
 みるものの
 俯くと
 恥ずかしげ
 
 ちらり流す
 目の端に
 自信のなさが
 隠しようもなかった 
 
 目の前の鏡の中の
 むさ苦しい男も
 彼らと
 瓜二つだ 

Posted by hasunoza